無事に確定申告も提出できたので、新刊の紹介をしたいと思います。書き下ろしの長編小説『凜』、発売になりました。講談社より税込1674円です。装丁は鈴木成一デザイン室、女の子の眼差しが印象的なイラストは大野博美さんの作品です。

 

凜

 

 大正初期の北海道のタコ部屋に連れてこられた東京の男子大学生、同じ時期に網走の遊郭へ向かう女性、そして現代の就活生がトリプル主人公のお話です。大正時代がメインの舞台ではありますが、残業時間の上限が100時間に決まったり企業のやりがい搾取が問題になったり芸能界やAV業界で問題が噴出したりしている今日このごろにも繋がる話になっています。資料を調べている最中、100年経ったのにこの国の構造はなにも変わっていないのでは……と怖くなりました。いままで書いてきたものとはかなり毛色が異なる、ザ・新境地って感じなので、世に送り出す側としては緊張で胃から万国旗や金魚を吐き出しそうな状態ですね。

 

 当初はぜんぜん違うタイトルで書いていたのですが、「漢字一文字で!」というオーダーを受けていろいろ考えてこれに決まりました。「豚」とか「腋」とかにならなくてよかったです。凜という漢字には「凜とした」というような意味合いのほかに「寒さが厳しいさま」という意味もあるそうです。ちなみに凜と凛は異字体で、どっちでもいいっちゃいいんですが、凜が正字で凛が俗字とのこと。

 

 書きはじめたのは2015年の6月ごろで、当時取材のためにおとずれた某駅はすでに廃止になってしまいました。そのとき撮った写真があるのでここに載せておきます。小説の冒頭あたりに出てくる駅なので、読めばどこなのかはわかるかと。

 

金華駅

 

金華駅

 

 トイレも自販機もない無人駅。壁には「熊出没注意!!」の貼り紙が貼られている(写真には写っていないけど)。ひとつ手前の駅にあったミニ図書館で司書さんに電車の乗りかたを訊ねると、「その駅に行きたいっていうひとにはじめて会いました!」と驚かれた。

 

金華駅

 

 うっかり電車に乗りそびれて、この駅で数時間過ごしたのですが、そのあいだ見かけた人間は畑仕事をするおばあさん1名、猫は5匹ぐらい。おばあさんと猫どちらからも警戒の眼差しで見られた。

 

金華駅

 

 数軒ある家の大半は廃屋。

 

慰霊碑

 

 小説のなかにも出てくる、タコ部屋労働者の追悼碑。

 

網走監獄

 

 おまけのセクシーショット。網走監獄の刺青が超ドープなマネキンたち。

 なんだか話が逸れてしまいましたが、新刊『凜』読んでいただけますとたいへん嬉しいです。
 

 発売から一か月以上経過していまさらな告知なのですが、『愛を振り込む』が文庫になりました。幻冬舎より税込583円です。2013年に出たもとの単行本よりも、サイズ的にもお値段的にもお求めやすくなっています。

 

愛を振り込む文庫版


 装丁は単行本のときと同じく大久保伸子さん。写真は大村祐里子さんの作品をお借りしました。私の本で表紙にイラストではなく写真を使っているのははじめてですね。雰囲気があって想像が広がる感じの写真で、気に入っています。
 中身はといいますと、一枚の千円札をめぐる短編連作集になっています。二十代後半から三十代前半の女性がそれぞれ主人公で、うまくいかない現状に足踏みしている彼女たちが出口を求めて足掻くお話です。私はお金のことが苦手で(そもそも指を使わないと繰り下がりの引き算ができないぐらい数字がわからない)、金銭的な将来設計を考えようとすると宇宙空間のことを考えるときと同じぐらいかそれ以上に意識がもうろうとするし、家計簿をちゃんとつけたことすらないのですが、この小説はお金が全体を通してのモチーフになっています。

 

 続いて、雑誌掲載をふたつほど。
 現在発売中の「小説現代」3月号の、猫好きのためのにゃんそろじーと題された猫小説特集に短編を書いています。「ファントム・ペインのしっぽ」というタイトルです。

 

小説現代3月号

 

 猫アンソロジーに書くことは夢のひとつだったので、叶って嬉しいです。そうそうたるメンバーのなかに混じっていて、場違いな感じがはなはだしいですが……。猫小説といっても、癒やし系の話ではなくなんだか辛気くさい話になってしまいましたが、読んでいただけますとさいわいです。

 

 あと、「特選小説」4月号に「修羅の君」という短編を書いています。こちらも現在発売中です。「特選小説」は成人指定のアダルティな雑誌ですので、ご注意を!

 

特選小説4月号

 

 修羅の君とはなにかっていうと、クレマチスの品種名です。花の。主人公は寺沢くんという青年でヒロインは美佐世さんという女性なのですが、このふたりの名前もクレマチスの品種名から取っています。

 私は去年の秋にベランダをクレマチスで覆い尽くそうと思い立ち、苗をいくつか買って植え替えて春に備えていたのですが、冬のあいだに飢えたカラスに荒らされほじくられ、芽が出る前にやる気を失っている状態です。花で埋めるはずのベランダは現在土がまき散らされて荒野のようなありさまに。

 

 それと! 3月14日に書き下ろしの長編が講談社より出る予定です。タイトルは『凜』。現代と大正時代を舞台にしたお話です。いままで書いてきたものとはがらりと変わっているんじゃないかなと思っています。

 詳しくは発売日になってから告知させてください。とはいえ、ちょうど確定申告(まだまったく着手していない)の締切と時期がかぶっていて、さきのことはなにも考えたくない気分なのですが。無事に確定したり申告したりできたら(そもそも毎年「これで合ってる……?」とどきどきしながら提出しているので、むしろ不確定申告と呼びたい)、また、ここで!

 もう年が明けて1か月近く経ち、2016年のできごと(ココイチの廃棄カツを転売したみのりフーズの責任者が「実質的経営者」という奇妙な名称だったことなど)が前世紀のことのように感じる今日このごろ、いまさらですが2017年もよろしくお願いします。

 

 さて、いま店頭に出ているはずのポプラ社の小説誌「asta*」2月号に短編小説を寄稿しました(それにしてもポプラ社の「asta*」の紹介ページ、2年前で止まってる……)。「明日町こんぺいとう商店街」という架空の商店街に、複数の作家さんがお店を持って物語を書く、というシリーズ(すでに文庫で3冊出ています)で、私は「ツルマキ履物店」という靴修理専門の履物屋さんのお話を書きました。戦前からある古い店で働く見習いの若い女の子と店主の偏屈ジジイの物語です。ずっと参加したいと思っていた企画なので、声をかけてもらえて嬉しかったです。お手に取っていただけますとさいわいです。

 

astaasta

 

 ほかには、2月7日に『愛を振り込む』の文庫版が幻冬舎文庫より出る予定です。これは2013年に出た単行本の文庫化です。20代後半〜30代半ばの人生があまりうまくいっていない6人の女性にひかりが差す一瞬を描いた、短編連作集です。本が手もとに届いたら、再度告知させてください。

 

 あと、私は2015年の秋ぐらいから服を縫うことに凝っていて、洋裁ブログもやっているので、お暇でしかたないかたは見てやってください。→縫ーベルヴァーグ

 去年の9月で更新が止まっており、すでに飽きていることが一目瞭然ですね。購入したものの手つかずのままの布が部屋を覆い尽くし、早く縫えと私にプレッシャーをかけています。その前はカクテルづくりに嵌まっていてカクテルブログをやっていたんですが、こっちはブログのアドレスすら思い出せない状態です。手を出しては放置して、手を出しては放置してで、これが趣味ではなく異性だったりしたらたいへんなことです。それでは。