香りを売りにした柔軟剤がスーパーの洗剤売り場の一角を占めるようになって久しい。それどころか、香りづけ専用洗剤まで売られている。汚れを落とす効果も柔軟作用もない、ただ良い香りをさせるためだけの洗剤。「車のダッシュボードに敷かれた無意味な白いムートン」や「股間部分に穴が開いており性器を覆うという役割を果たさないエロ下着」みたいな商品だ。
 ところで私は柔軟剤のたぐいをめったに使わない人間である。「せっかく洗濯してきれいになったものに、ぬるぬるした液体をつけるなんて!」と思っている。あるいは、部屋干しがデフォルトの北海道民であるせいかもしれない。香りつき柔軟剤を使って洗濯して部屋に干すと、室内が湿った人工的な香りに満たされて気持ち悪くなるのだ。だが、いまの香りつき柔軟剤の百花繚乱っぷりを見ると、この件に関しては自分がマイノリティであることを認めざるをえないようだ。

 香りつき柔軟剤の特徴として、「名前がきらびやか」というのがある。売り場でいつも、趣向を凝らした表現に驚かされている。たとえば、P&Gのレノアのラインナップはこうだ。
レノア一覧

「フレッシュグリーン」とか「フルーティソープ」はまだ香りの想像がつくのだが、「プリンセスパール&ドリームの香り」、訳すと姫真珠と夢の香りとはいったいどんなにおいなのだろう。「アメジストバニラ」「ルビーフローラル」「エメラルドブリーズ」も、鉱物のにおいなんて嗅いだことないし……と不安になってくる。レノアオードリュクスに関しては、イノセントとセンシュアル、つまり「無垢」と「官能的」の2種を展開している。非常にエロティック。任天堂さん、つぎのポケモンは「ポケットモンスター イノセント/センシュアル」でいかがでしょう?

 香りの名前に凝っているのは柔軟剤だけではない。トイレ用品にも多種多様な香り名があふれている。つぎの表は小林製薬のブルーレットおくだけのラインナップ。
ブルーレット一覧

「心地よいピンクソープの香り」。おピンクなソープだなんて、そりゃ心地よくて当然だと思う。いかがわしすぎる。「洗いたてほのかな柔軟剤の香りホワイティーフローラル」はトイレの洗浄剤なのに、柔軟剤の香りがするとアピールしている。なにかがねじ曲がっている。
 このなかでひときわ目を惹くのは、「心ときめくセレブリティーアロマの香り」だろう。ブルーレットなのにセレブ。無理しすぎてない? 都会に馴染もうと背伸びしすぎてない? いぶりがっこときりたんぽを送ったから食べて故郷を思い出してね。疲れたら帰ってきなさいよ。と田舎のお母さんの気持ちになってくる。辞書を引いたところ、celebrityとは「1 名声、功名 2 名士、有名人」であるらしい。セレブという言葉が日本で曲解されて使われるようになって久しいが、行き着くところまで行き着いた感がある。

 トイレ用の消臭芳香剤もいろいろと賑やかだ。下は、エステーの消臭力トイレ用と小林製薬のトイレの消臭元のラインナップ。
トイレ消臭芳香剤一覧

 なぜかこのジャンルは「心」という言葉の登場頻度が非常に高い。心がやすらいだりおどったり透きとおったりなごんだりすっきりしたり、大忙しだ。トイレの消臭芳香剤とはこんなにも心を動かすものだったのか。知らなかった。

 香りブームの影響なのか、こういう商品もあります。
ローズの香り蚊取線香
 はなやぐローズの香りのかとりせんこう。