数ヶ月前、実家を取り壊すために荷物を整理していたら、小森和子『愛と性』という本が出てきた。むかし古本屋で買ったのだ。1991年刊行のこの本は、いまは亡き小森のおばちゃまこと小森和子さんが82歳のときに出した、自伝的恋愛エッセイである。「小森のおばちゃま? だれそれ?」とお思いの平成生まれは無視して、今日はこの本を紹介したい。

『愛と性』目次
 目次を見ているだけでも刺激的だ。小見出しの一部をご紹介。

・最後に楽しんだのは76歳のときよ
・フランク・シナトラさんには迫られたの
・初めてエクスタシーを教えてくれたのは外国人だったの
・サイズの大小も相性次第ね
・外国旅行中、檀一雄さんとのラブ・アフェアを噂されたの
・夫の浮気に気づかなかったわ
・そのとき、実は私も浮気中だったの
・ボーイフレンドとベッドイン中に、先生が……(※この先生とは菊池寛のこと)

 いまここを読んでいるひとは、「最後に楽しんだのは76歳のときよ」が気になって瞳孔が全開になっていることと思われるので、該当箇所を抜粋したい。

 私の最後の情事のお相手は、30歳前後くらいだったかしら。仕事を通じて知り合った音楽関係の男の子ね。(中略)それで、こちらから仕掛けてみたの。まずレコードを替えるときに、そっと相手の肩に手をかけて、向こうは別に気づかない感じでそのまま動かないから、今度は私が耳にキスしたの。スーッと側に寄って、耳の先っぽにチュッと軽くね。

 このあと、そのまま愛を交わしたらしい。「30歳前後の音楽関係の男の子」もいまは初老になっているはずで、順調に仕事を続けていればそこそこ偉い立場になっている可能性が高い。「音楽業界の偉いひと」がメディアに出ていると「このひとが76歳の小森のおばちゃまと……!?」と考えてしまうようになった。このひとは一般人なのでもちろん名前などは出てこないが、著名人との性的エピソードは実名でわんさか書かれており、「プライバシー? なにそれ?」状態だ。「フランク・シナトラさんには迫られたの」から一部抜粋する。

 でもこの思いをすんなり切らせたのは、私の経験からきたようなの。つまり外国人は日本人のフィジカル(肉体)と違って、あのイチモツの大小が激しいのよね。もしシナトラさんのイチモツが特大サイズだったりしたら、それに慣れていない私の肉体へのダメージはかなり大きいかも……。

 シナトラの誘いを拒んだのはサイズへの懸念という衝撃の事実! また、サイズ問題は外国人の恋人(巨根)と別れて慶応の大学生とつきあった話にも出てくる。

 かんじんな彼のイチモツとの感触はハスッパな言葉で失礼ながら形容すると、 まさに“太平洋でゴボウを洗う”テナ感じ。

 小森のおばちゃまは若いころ出版社に勤務していたため、文士絡みのエピソードも多い。「外国旅行中、檀一雄さんとのラブ・アフェアを噂されたの」から一部抜粋しよう。

 檀さんは原稿にゆきづまると、男性のシンボルのアソコを女性に握っててもらわないと書けないという奇妙なクセがあるのね。
「握ってもらうだけで落ち着くんだ」
 そう言うの。だから私、ホテルの檀さんの部屋に行っては握っててあげたの。(中略)こうして私は檀さんが小説を書くための陰の「お手伝い」をしながら、ニューヨーク、ロンドン、パリを旅したの。そして檀さんの原稿が進むから、ヤキモキしていた新聞社の人にはずいぶん感謝されたわ。

 檀一雄の名作料理エッセイ『檀流クッキング』もおばちゃまに股間を握られて書いたのだろうか、と気になってくる。まさに新聞連載だったし。『檀流クッキング』で紹介されている蒸しアワビやキリタンポ鍋などが、とたんに性的なものに思えてきた。そして娘の檀ふみさんはこれを読んでどう思ったのでしょうか……。読んでなくても周囲のひとから聞かされたことはあるのでは……?
 あと、どうでもいいけど「男性のシンボルのアソコ」って表現くどくない? 「男性のシンボル」もしくは「男性のアソコ」でよくない?

 また、性的なかかわりのあった男性だけでなく、女性の友人もデリケートな話をさらっと暴露されている。

 親しい美女の塩沢ときさんは、
「実は私もずっと自分が不感症じゃないかって秘かに悩んでいたの。38歳まではどんな人と寝ても全然よくなかったの。ところがある日、アレッ! って感じたの。それからはもう、とにかくその人に抱いてほしいっていう気持ちが激しくて。まさにお女郎さんの心境ね。そうしたら、それまでは恥ずかしいくらいペシャンコだったおっぱいが、急にムクムク大きくなってきたのよ(以下略)」
 という話も聞かせてくれました。

 不感症時代を経て色欲の虜となったことや貧乳であったことを無邪気に書かれてしまった、塩沢ときさんの心境やいかに……。

 とまあ、この本のエキサイティングな部分を中心に紹介したわけだが、ただスキャンダラスで扇情的なエッセイなのではなく、「若いお嬢ちゃん方がそれぞれご自分の素晴らしいと感じられる人生を送ることができたら」という、あたたかで真摯な思いを込めて書かれた本だということは強調して言っておきたい。また、恋愛だけでなく、映画評論家としての姿勢も語られている。

 映画を見る私の場合、批評しないといけないからといって斜に構えて見たり、細かいところまで見ないといけないとか、難しいことを引き出さないといけないとか考えて見るのではなくて、スッと素直に映画の中に入っていくの。自分の生涯の残り少ない時間をできるだけエンジョイしたいと思うから、私は映画を構えて見たことなんかないのよね。

 専門家としての知識や深い考察を重視されがちないま、良くも悪くもこういうタイプの評論家って少なくなりましたよね。ただ、

 (映画の)キスシーンなんかでヒーローの顔がヒロインに近づいてくると、無意識のうちにソッと瞼を閉じて、くちびるをひそかに開いて受け入れ体勢をとっていることもあるみたい。

 という状況を想像するとウッと思ってしまうし、映画館や試写会場でとなり合わせたひとに少しだけ同情する。

『愛と性』著者近影
 著者近影。この本、意外にもブックデザインは鈴木成一さん。こんなにも朗らかに人生を謳歌した小森のおばちゃまだが、晩年はパーキンソン病と認知症とうつ病を患っていたそうで、切ない。

 2014年も10日を過ぎ、いまさら新年のごあいさつをするのは憚られるムードではありますが、昨年お世話になったかた、かかわりのあったかた、ここや拙著などを読んでくださったかた、マンションの雪かきをしてくれる管理人さん、ありがとうございました。 今後ともどうぞよろしくお願いします。今年は連載の予定などもあるので、ぼちぼち告知していければと思っています。

 年末年始のできごとでは、紅白を見ながら夫のお母さん(大正生まれの88歳)が「嵐の櫻井って子、お父さんが官僚なんですって?」と発言しキムタクを「タクヤ」と親戚の子のように呼んでいたことが、強く印象に残っています。 頭もからだもしゃっきりとしたまま歳を重ねるには、ジャニーズタレントへの関心が不可欠なのだろうか……、と男性アイドルに嵌った経験のない私は焦燥感を覚えました。

 年始のあいさつだけで終わらせるのはきまりが悪いので、ここ最近夫に持たせたお弁当の写真でも貼ってお茶を濁したいと思います。

12月24日のお弁当
弁当1

12月26日のお弁当
弁当2

1月7日のお弁当
弁当3

1月9日のお弁当
弁当4

「そろそろ海苔文字はやめてもいいんじゃない……? ネタ切れっぽいし、もう充分頑張ったよ……」と夫に遠回しな引退勧告をされたので、ここで打ち止めです。 ご覧いただきありがとうございました。

 東京都千代田区のキャッチフレーズは「都心の魅力にあふれ、文化と伝統が息づくまち千代田」で、名古屋市は「人・まち・自然がつながる交流・創造都市」だ。
 それに引き換え、札幌市白石区のキャッチフレーズは「おもしろいし」、札幌市豊平区は「夢ひらく 花ひらく とよひらく」 、札幌市手稲区は「ていねっていいね」である。
 あまりにも駄洒落が好きすぎるのではないか、駄洒落に頼りすぎでは、と前々から気になっていた。どれも特性を伝えるというキャッチフレーズの役割すら果たしていない。「駄洒落が成立してりゃオッケー!」と言いたげな気迫だけをひたすらびんびん感じる。
 しかもこれは札幌市内に限った話ではない。北海道全土が駄洒落に支配されている可能性があるのだ。そこで、北海道内の市町村のキャッチフレーズから興味深いものを抽出してみました。

【駄洒落系】
■美しき唄のまち 美唄町
「美しき唄」って具体的にはどの唄のこと? なんて疑問はどうでもいい。 駄洒落として美しければそれでオッケー。

■厚い真ごころ、大いなる田園の町 厚真町
 駄洒落一本で勝負するのは気が引けたのか、後半で町の特性をアピールする真面目さに瞠目。

■みんな 笑顔で あったかす 鷹栖町
 あきらかに北海道弁ではない訛りが。馴染みのない訛りを使ってまで駄洒落にしたいという執念。

■ここまでくるとべつせかい 別海町
 結婚詐欺連続不審死事件の被告・木嶋佳苗の出身地として一躍有名になった別海町。 確かにあの事件はべつせかいな印象があった。

■もっと せいかつ う〜んと しあわせ 妹背牛町
 それぞれの頭の文字を取ると「もせうし」、つまり妹背牛になる。 あいうえお作文的な発想。キャッチフレーズじたいにはあんまり意味がないですね。

【ねじ曲がった卑屈さ系】
■都会に近い田舎のまち 由仁町
 プライドと引け目が感じられて、なんだかたまらない。思春期の鬱屈みたいな感じ。

■青空、緑、地平線。他に何もない贅沢 新篠津村
 由仁町とは違い、それこそが贅沢だと言い切る開き直り。

【言いたいことがありすぎて系】
■青い海と山海の幸に恵まれた毛利衛宇宙飛行士誕生のまち 余市町
 いきなり「毛利衛宇宙飛行士」という人物名が登場。自治体のキャッチフレーズは「協働」やら「創造」やら抽象的になりがちだが、これは具体的すぎるのでは……。

■「レ・コード」と「音楽」「競走馬」のまち 新冠町
■パークゴルフとナウマン象のまち 幕別町
■へそとスキーとワインのまち 富良野町
 レ・コード? ナウマン象? へそ? とりあえずアピールしたいものは全部つっこんどけ! という勢い。ラベンダー畑よりも『北の国から』よりも、北海道のへそであることをいちばんに周知させたい! という富良野の意外な本心が興味深い。

【メルヘン系】
■まんまるはーと 月形町
 月の形→丸い、という発想から来ていることはわかるが、月形町の特性はどこへ?

【ふるさと系】
■エネルギーのふるさと 泊村
 ようは原発がある村なのだが、原子力発電所を「エネルギーのふるさと」とやわらかく表現してオブラートに包んでいる。

■ようこそ、かかしのふるさと共和町へ
 原発とはかけ離れた存在、かかしが颯爽と登場。

【当て字系】
■きらめく海・駒ヶ岳(やま)・うるおいの湯郷(ユートピア) 鹿部町
 スーパー銭湯の名前にありそう。湯郷と書いてユートピア。

■いきいきと里住夢(リズム)あふれるまち 遠別町
 最近のお子さんの名前にありそう。里住夢ちゃん。

 ……調べているうちに、北海道だけがこんなに珍キャッチフレーズの宝庫なのだろうか、と心配になってきました。ほかにも珍キャッチフレーズだらけの都道府県がどこかに存在すると信じたいです。