先日、寂れた熱帯魚店で水草を購入したところ、プラナリアが大量についていた。プラナリアは水槽に混入すると大発生して始末に負えなくなるので、アクアリウムの世界では害虫として疎まれている。小型のヒルみたいな生きものに最初はぎょっとしたが、伸び縮みしながら前進するようすを眺めているうち、愛着が湧いてきた。シンクに流すつもりだったけど、大きい2匹だけを空き瓶に入れて飼うことにした。

 成長すると2cm以上になるらしいが、2匹ともまだ1cmにも達してなくて写真に撮るのが難しいため、イラストで失礼します。

プラナリア1
 プラ太とプラ子と命名し(でも雌雄同体)、愛でる。三角頭のかわいいやつだけど、見ようによっては卑猥。
プラナリア2
プラナリア3
 プラナリアたちの暮らしぶり。ネットで調べたところによると、好物は鶏ささみらしい。猫やダイエッターやボディビルダーと同じ。

プラナリア4
 縦に切って双頭や三頭のキメラをつくるマッドサイエンティストごっこがしたかったのに、しのびなくてナイフを入れられなくなってしまった。机のうえに置いているので、仕事で行き詰まったときやPCの再起動中に眺めると癒されます。2013年、プラナリア飼育が疲れた現代人のあいだで流行る!

 ひとの顔を憶えるのが極端に苦手だ。

 人間はひとの顔を見分けるとき、過去に遭遇した顔のデータベースからつくられた「平均顔」と比較することで、個人の特徴を見いだして識別しているらしい。つまり、出会った顔のサンプル数が多ければ多いほど、精度の高い識別ができることになる。だとすると、普段あまり他人と会わない生活をしている私が顔を憶えるのが苦手なのは当然のことだし、接客業のひとは、顔を憶えるのが得意なのだろう。アジア人と接する機会の少ない国のひとは、アジア人の区別がつきにくいだろうし、黒人がめずらしい国の人間は、黒人を見分けるのが苦手に違いない。

 たとえば、外国人に遭遇する機会がほとんどない土地に暮らすおばあちゃんに、ウィル・スミスとジェイミー・フォックスとEXILEのネスミスと演歌歌手のジェロの写真を見せて、「どれがジェロでしょう?」と訊ねたら、正解率はかなり低いんじゃないかと思う。かつてそれなりにジェロを応援していた、というおばあちゃんでも間違えるのではないでしょうか。

ジェロと仲間たち
 写真を並べてみたら、あんがい似ていなかった。

 しかしそこにフォレスト・ウィテカーの写真を混ぜたら、「こいつはジェロじゃない」とまっさきに除外されるはずだ。フォレスト・ウィテカーの顔が特徴的であることはもちろんだが、「鶴瓶に似てる……」という感想がまっさきにおばあちゃんの頭に浮かび、ジェロ候補のメンバーから外されるに違いない。

鶴瓶とそっくりさん
 フォレスト・ウィテカーと笑福亭鶴瓶

 少なくとも、鶴瓶に似てる黒人俳優=フォレスト・ウィテカーと記憶しておけば、以後フォレスト・ウィテカーをほかの顔と混同することがなくなる。よく知った顔と結びつけて憶えることが、ひとの顔を記憶するときのポイントなのだろう。ローレンス・フィッシュバーンと山口智充、といったぐあいに。

ぐっさんとそっくりさん
 ローレンス・フィッシュバーンと山口智充

 ところで私はHKT48の指原莉乃さんと女優の平岩紙さんの見分けがつかないのだが、この手の顔の女性たちが暮らす村にホームステイしたら、見分けかたを習得できるようになるんだろうなあと思っています。

【架空の村の住民たち】
指原と仲間たち
 左から指原莉乃・平岩紙・小島麻由美・aiko

【単行本】

『凜』 講談社(2017年3月刊行)
 書き下ろしの長編です。大正初期の北海道のタコ部屋へ連れていかれる東京の大学生、同じ時期の網走の遊郭へ向かう女性、現代の就活生がトリプル主人公の小説です。100年を経てまだ根っこの部分は変わっていないのかもしれない、この国の搾取と労働についてのお話です。


『フィッターXの異常な愛情』 小学館(2015年4月刊行)
「きらら」で連載していた小説が本になりました。32歳の広告業界で働く営業職の女性と、男性のランジェリーフィッターと、その周囲の困った人びとが繰り広げる、ポップでカラフルなお仕事ラブコメ小説です。

『愛を振り込む』 幻冬舎(2013年10月刊行)
 書き下ろしの連作短編集です。行き詰まっていたり、満たされない思いやままならない気持ちを抱えていたり、生きるのがへたくそだったりする女のひとたちの物語が、一枚の千円札を媒介にして繋がっています。各話タイトルは「となりの芝生はピンク」「お客さまの声はこちらまで」「カフェ女につけ麺男」「月下美人と斑入りのポトス」「不肖の娘」「愛を振り込む」、そしてエピローグです。

『星とモノサシ』 マーブルトロン/中央公論新社(2012年5月刊行)
 書き下ろしの連作短編集です。 相手にべっとり依存してしまう女の子、ネット上の友人との距離を推し測る女性、好きな女の子に近づくため女装する男の子、売れないミュージシャンとそのおっかけ等々――。九人の人びとの思いを通して描く、ひととひととの距離感に関するオムニバス形式の物語です。

『自縄自縛の私』 新潮社(2010年9月刊行)  ※絶版・文庫化済み
 デビュー作です。「自縄自縛の私」「祈りは冷凍庫へ」「ラバーズ・ラヴァー」「明日の私は私に背く」「ごみの、蜜」の五篇を所収。自分で自分を縛るのが趣味の女性や、ごみ収集車に異様な執着を抱いている女の子などなど、おおっぴらには語りにくい嗜好に自身を託している人びとが出てくる短篇集です。「女による女のためのR-18文学賞」大賞受賞作である表題作は当初「自縄自縛の二乗」という題だったのですが、紆余曲折を経てこのタイトルに。

【文庫】
『愛を振り込む』 幻冬舎文庫(2017年2月刊行) ※文庫化
 2013年に刊行された連作短篇集の文庫化です。ままならない気持ちを抱えて足掻いている20代後半〜30代前半の女性の6人の女性がそれぞれ主人公の、お金にまつわるお話です。

 

『人肌ショコラリキュール』 講談社文庫(2013年9月刊行) ※文庫オリジナル
 ずきずき苦くて、とろりと甘い、六つの物語。単行本を経由せず文庫で登場の、短編小説集です。「あなたモドキ」「ヴォルフガングとそのほかのこと」「サーティーデイズ、ワンクール」「ストロベリー・イン・ナイトメア」「リコちゃんの暴走」「ふるえる口蓋」を収録。カバーイラストは漫画家の志村貴子先生!

『自縄自縛の私』 新潮文庫(2012年12月刊行) ※文庫化
 2010年に刊行されたデビュー単行本の文庫版です。単行本に収められている五作に、書き下ろし短篇「渡瀬はいい子だよ」をつけ加えました。解説は、映画の監督を務めていただいた竹中直人さんです。

【アンソロジー】
『10分間の官能小説2』 講談社文庫(2013年5月刊行)
 十人十色の短い小説が詰まった、官能アンソロジーです。私は「さなぎのなかみ」というタイトルのお話を寄せています。

『文芸あねもね』 新潮文庫(2012年2月刊行)
 復興支援チャリティ同人誌として電子書籍で発売していた『文芸あねもね』が、文庫になりました。執筆メンバーは、彩瀬まる・豊島ミホ・蛭田亜紗子・三日月拓・南綾子・宮木あや子・山内マリコ・山本文緒・柚木麻子・吉川トリコ(五十音順/敬称略) の十名。私は「川田伸子の少し特異なやりくち」という短篇小説を寄せています。執筆者十名ぶんの印税はすべて、日本赤十字社に寄付させていただきました。

『眠らないため息』 幻冬舎文庫(2011年12月刊行)
 七名の女性作家の作品が収録されている、恋愛官能小説集です。私が書かせていただいたのは「掃除機ラヴ」というタイトルの、突然掃除機に欲望を抱くようになった女性のお話です。