Twitterに上げたネタの使いまわしで恐縮だが、夫のお母さんにいただいた猫の眼鏡&スマホクリーナーを紹介したい。
猫クリーナー外見
 一見かわいい猫ちゃんのミニぬいぐるみ。
 
猫クリーナーバ
 臀部になにやら仕掛けが。

猫クリーナープラグ
 紐を辿ると、リングとプラグが菊門から出てきた。こんなに大きなリングを体内に収めていたなんて、括約筋が伸びきってもとに戻らないのでは……。そしてほんものの猫がお尻のにおいを嗅ぎに来た。

猫クリーナー布
 さらに、仕込んでいた万国旗をするする出すように大きな布が登場。内臓でしょうか?

猫クリーナー説明書き
 商品は猫なのにパッケージは亀という手抜きぶり。亀は口から布をどばっと吐き出すことが判明した。姑は自分用にも同じものを買ったそうですが、夫がこのおぞましいつくりについて指摘すると「そこがいいんじゃない」と言っていたとのことです。

※びろうな話です。

「これを健診センターに持って行ってくれる?」
 ある朝、夫に封筒を渡された。中身は大腸がんの再検査のために採取した物体である。便秘ぎみの夫が血の滲むような努力をして(実際に血が滲んでいたら要精密検査なのだが)得た、希少な宝石のごときBEN。それをしかるべき機関に運ぶという重大なミッションを仰せつかったのだ。

 普段ひとの役に立つことをほとんどしていない私は、BENトランスポーターとしての初任務にはりきった。だが、そのはりきりは長く続かない。仕事をしたり仕事でないことにうつつを抜かしたりしているうちに午前の時間が過ぎ、午後になり、陽も陰ってきた。まだ間に合うだろう、まだ間に合うだろうと先送りにしているうちに本格的にまずい時刻になり、しぶしぶ家を出た。

 電車か自転車か迷ったが、自転車で行くことにした。自転車に乗るのは今年はじめてだった。ひと冬を越した自転車は埃をかぶって汚れていたので、いったん部屋に戻りウェットティッシュを取ってきて拭き清めた。ようやく出発だ。春の風を感じて軽やかに自転車を漕ぐつもりだったのに、雪融け直後の空気は埃っぽく、口内がじゃりじゃりになっていく。馬車や馬ぞりが道路を通行していた時代には、冬のあいだに堆積して乾燥した馬糞が雪融けとともに舞い上がる「馬糞風」がこの時期の名物だったらしい。それに比べたらいまはずっとマシだと自分を鼓舞した。

 健診センターに着いたのは午後5時5分。厭な予感に襲われつつビルに入り、階段を登る。予感は的中し、健診センターのフロアはすでに営業を終えて閉鎖されていた。私は自転車のかごにBENを載せて、来た道を引き返した。その日は金曜日で、土日は健診センターが休みなので、希少なBENは提出のタイムリミットを迎えて無駄になってしまう。こんな子どものおつかいのようなことすらちゃんとできないなんて、情けなくて泣きそうになった。4月とはいえ歩道の端にはあちこち雪が残っていて、つめたい風が肌を刺す。手は老婆のようにしなしなに干からび、皮膚が切れて血が滲んだ。数日経ったいまも私の手はがさがさに荒れて老婆のままであり、無駄にされたBENの呪いなのかもしれないと思っている。

 余談だが、子どものころ飼っていた犬(正確には同じ敷地内に住む祖父母が飼っていた犬なのだが)はベンジャミンという英米人か観葉植物みたいな名前で、愛称はベンだった。犬の名前を問われてベンだと答えると、からかわれることが多くてつらかった。ベンを家に入れると、一目散に猫のトイレへ飛んでいって猫のBENを食べた。猫は呆然としてそのようすを見ていた。

 お菓子づくりというと家庭的で牧歌的なイメージがあるが、私がお菓子をつくるのはなんらかのストレスを感じているときである。会社員時代、終電間近に帰ってきて深夜に菓子を焼くという習慣を続けていた時期もあった。できるのはカロリーと糖質のかたまりなのに、なにかを成し遂げたような錯覚を覚えるのがみそだ。

 とくにストレスに効くのは、パウンドケーキのようなバター→砂糖→卵→粉と混ぜていくタイプの焼き菓子である。うまくやらないと卵を投入する段階で生地が分離してしまうので、とてもスリリングで高揚する。家族が寝ている時間に轟くハンドミキサーの音、キッチンに充満する暴力的な甘い香り。仕事のあとで集中力に欠けているのでうっかり順序を間違えて失敗することもあり、するとストレスが倍増するという諸刃の剣でもある。苛々しながらかき混ぜているさまは、ゆったり穏やかなお菓子づくりのイメージからはほど遠い。

 つくるのが目的なので、できたお菓子は少し摘まめば満足する。とくにパウンドケーキなどバター多めのリッチな焼き菓子は、つくるのは好きだが食べるのはそれほど好きじゃない。最近は自分好みの素朴な味のお菓子しかつくらなくなったけれど、それでも余ってしまう。実家暮らしのときは家族が消費してくれた。甘いものをたらふく食べることでストレス解消するタイプだが糖尿病の心配のないひとが、となりに住んでいたらいいのになあ、と思う。

「職場やママ友の集まりで手づくりのお菓子を配るひとって、なんかアピールしてるみたいで苦手、手づくりって気持ち悪いし」と嫌うひとも多いらしいが、深夜に「ちくしょう○○め! うああああうあああああ!!!」と感情をぶつけながら生地を練っているところを想像して許してやってほしい、と思ったけど、それじゃあよけい食べたくなくなるか。

 以下、最近つくったもの。
カヌレ1
 むかしブームになったらしいが、近年ではめったに見かけないカヌレ。外側はがっちがち、内部はねっちょり、という失敗ケーキにしか思えない食感が好き。レシピはこれ(かんたんだけど3日かかる!)の砂糖を50gほど減らしている。シリコンのミニバラ型で焼いたらまったくカヌレには見えず。

カヌレ2
 型を買って再チャレンジ。正しいカヌレは外側がもっと卑猥に黒光りしているものなので、今度は蜜蝋を用いるトラディショナルなレシピを試したいと思う。

クッキー焼成前
 スペキュロス(ベルギーのスパイスクッキー)、焼成前。レシピはこれの砂糖をヴェルジョワーズではなくきび砂糖にして、15gぐらい減らしている。クッキーはかんたんすぎて達成感に欠けるので、型抜きの工程で欲を満たす。

スペキュロス
 できあがり。砕いた飴を仕込んでステンドグラスクッキーにしてみたが、スパイスの風味とフルーツキャンディは激しく合わない。

スペキュロス
 食べれども食べれども減らず。